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日本映画久々の傑作家族ドラマ
(2008-11-20)
会話劇というか、群像劇っぽく展開されていくんですが、一つ一つのエピソードが計算されていて、無駄がない。そのディテールの積み重ねが指し示すのは、目に見えない存在、15年前に海で溺れた少年を助けて死んだ長男なんですね。跡取りを失った父親の失意、未だに兄へのコンプレックスを克服できない弟。そして、息子の死の痛手が辛辣な言動になって出てしまう母親。不在の存在がこの家族の葛藤の因になっていることが顕わになっていく経緯は、周到に仕組まれた推理ドラマを見るよう。
とにかく、役者が良い仕事していますよ。阿部寛も、父親に反発する役をよく演じていましたし、阿部寛とバツイチ子連れで結婚した夏川結衣も、そうした引け目をさりげなく演じています。YOUと樹木希林との母娘の掛け合いが可笑しい。YOUの持つ空気感がイイ。また、頑固でどこか憎めない古い考えの原田芳雄もはまり役だったと思います。孫達が「おばあちゃんの家」と言いながらはしゃぐ姿を見て、「この家はわしが建てた、"おじいちゃん"の家じゃないか」とぼやく様子など、思わずくすっと笑ってしまう場面も多い。古い男の哀感をみせるのもいい感じです。
それで、なんといっても樹木希林です。特に、亡くなった兄が助けた子供(今はもう大人になっている)を、わざわざ呼んだとわかるシーンが圧巻でした。さすがに阿部寛は、「もう時間が経ったんだし、呼ばなくていいんじゃない?」と言うんだけど、それへの樹木希林の返事が凄い。その時の樹木希林から発せられる殺気、殺気というより、怨念というか、子供を殺された母の想い。そういうのが、バリバリ伝わってくるんですよ。それを、樹木希林は手仕事しながら、さりげなく言うんですよ。あくまでさりげな〜くね...。(怖)
夏の1ページを切り取った百日紅(さるすべり)のショットとか、幕間のホッとするようなシーンもありました。ジワジワとしみる映画です。しかも、「ホラ、感動したでしょ?」みたいな、安っぽい押しつけがましさがないところがいい。ほろ苦くて、味わい深い。
さわやかな苦さが残る映画
(2008-10-24)
歩いても、歩いてもは苦い映画である。しかし、その苦さは小気味よい。家督を継ぐべき息子を失った上、次男に出奔された親と、親の期待に応えられなかった子の、決して理想的とはいえない、しかしそれでいて濃密な関係が、姉一家や兄の死と関わった人間とを巻き込んで繰り広げられる。決して喜劇ではない。かといって悲劇でもない。ひとつには自分の両親と姉一家を通して、またひとつには妻と妻の連れ子を通して経験する、他人ではない家族だからこそ味わねばならない心理の機微。ユーモアとペーソス、時には残酷。この機微がもたらす主人公の心の揺れは、喜怒哀楽という感情とはまた別の次元で我々の心を揺らす。家族の中では正論というものは通用しない。あくまでも当人らの「普通」の感覚がすべてを支配してしまう家族の濃さ。自分の親が健在なら健在なりに、もし故人であれば、残された子としてさらに深い感慨を持って見ることができるだろう。そして自分なりの感慨を抱くことができることこそがどれだけ幸せなことであるかに、はたと気づく映画でもある。


